堅実な積立投資家のために:ポートフォリオを整えるリバランスの重要性
積立投資を続ける中で考えたい「リバランス」とは
低金利が続く現代において、将来の資産形成、特に老後資金への不安から、積立投資を始められた方もいらっしゃるかと存じます。毎月コツコツと一定額を積み立てることで、投資の専門知識がなくても、着実に資産を育てていくことができるのが積立投資の大きな魅力です。
しかし、ただ積み立てていくだけで良いのでしょうか。資産が少しずつ増えてくるにつれて、次に考えたい大切な運用管理の手法があります。それが「リバランス」です。
本記事では、積立投資で堅実に資産を増やしてきた方が、さらに将来にわたって安心して資産を維持・成長させていくために知っておくべき「リバランス」について、その目的や具体的な方法を分かりやすく解説いたします。
リバランスが必要な理由:なぜポートフォリオは偏るのか
リバランスとは、簡単に言えば「投資している資産の配分を、当初決めた目標の割合に戻すこと」です。
たとえば、資産配分の目標を「国内外の株式に50%、国内外の債券に50%」と決めて積立投資を始めたとします。ところが、数年経過して株式市場が好調に推移した場合、当初50%だった株式の割合が、資産全体の中で60%や70%に増えているという状況が起こり得ます。逆に、債券市場が不調であれば、その割合は減っているかもしれません。
このように、市場の変動によって、投資している資産の種類ごとの割合(ポートフォリオ)は自然と変化していきます。これは、各資産の値動きが異なるために発生する現象です。
この変化によって、もし株式の割合が大幅に増えた場合、次に株式市場が大きく下落した際には、資産全体が受けるダメージも大きくなってしまいます。つまり、当初想定していた以上にリスクの高い状態になってしまう可能性があるのです。
リバランスは、このようなポートフォリオの偏りを修正し、自分が許容できるリスクの範囲内に資産配分を保つために行う、非常に重要な手続きです。
なぜ今、リバランスが重要なのか
特に40代後半から50代という世代にとって、リバランスは一層重要になると言えます。それは、多くの場合、ある程度の期間積立投資を続け、資産が積み上がってきている段階だからです。
資産規模が小さいうちは、ポートフォリオの多少の偏りが全体に与える影響も限定的かもしれません。しかし、資産が増えるにつれて、その影響は無視できなくなります。意図せずリスクの高い状態になっていると、もし大きな市場変動があった場合に、積み上げてきた大切な資産が大きく目減りする可能性があります。
老後資金など、将来確実に必要になる資金を形成していく上で、リスクを適切に管理し、安定した運用を続けることは不可欠です。リバランスは、この「安定した運用」を支えるための土台となります。
リバランスの具体的な方法と実践のポイント
リバランスにはいくつかの方法がありますが、基本的な考え方は同じです。偏ってしまった資産配分を、当初目標としていた割合に戻します。
主なリバランスの方法
- 売買によって調整する:
- 値上がりして割合が増えた資産を一部売却します。
- その資金で、割合が減ってしまった資産を買い増します。
- この方法が最も直接的に、目標とする資産配分に戻すことができます。
- 積立額の配分で調整する:
- 毎月の積立額を、割合が減ってしまった資産に多く振り分けるように変更します。
- 売却の手間がかかりませんが、目標配分に戻るまでに時間がかかる場合があります。
多くの積立投資家、特にこれから始める方や始めたばかりの方には、1の方法、つまり「売買による調整」がシンプルで分かりやすいかもしれません。
リバランスを実践するポイント
- 頻度を決める: リバランスは頻繁に行う必要はありません。一般的には、年に一度など、あらかじめ行う時期を決めておくのがおすすめです。機械的に行うことで、感情に左右されず、冷静に実行できます。例えば、年末や年度末など、区切りが良い時期を選ぶ方が多いようです。
- 目標となる資産配分を決めておく: リバランスは、目標とする配分があってはじめて意味を持ちます。「株式〇%:債券〇%」のように、ご自身の年齢やリスク許容度、運用目標に応じた配分を最初に決めておくことが重要です。
- NISAやiDeCo口座の場合: これらの非課税口座内で積立投資を行っている場合、売却益に対する税金はかかりません。ただし、iDeCoの場合は一部売却・一部購入といった柔軟なリバランスが難しい場合もありますので、利用している制度や金融機関のルールを確認してください。つみたてNISAであれば、積み立てている投資信託の一部を売却し、別の投資信託(あるいは同じ投資信託で割合を増やす)を購入することでリバランスが可能です。
リバランスのメリット・デメリット
メリット
- リスク水準の維持: 当初定めたリスク許容度内にポートフォリオを保つことができます。意図しないリスクの上昇を防ぎます。
- 市場変動への対応: 値上がりした資産を売却し、値下がりした資産を買い増すことは、「高い時に売って安い時に買う」という、投資の基本的な考え方にも合致します。
- 計画通りの運用: 感情に流されず、長期的な運用計画に沿って資産を管理することができます。
デメリット
- 手間がかかる: ポートフォリオの確認や売買の手続きが必要です。
- 売買コスト: 一般的な証券口座で行う場合、売買手数料がかかることがあります。(ただし、現在ではネット証券を中心に手数料が非常に低い、あるいは無料の商品も多くなっています。NISA/iDeCo口座内での売買は非課税であることもメリットです。)
これらのデメリットを考慮しても、特に資産規模が大きくなってきた際には、リバランスを行うメリットの方がはるかに大きいと言えるでしょう。
まとめ:リバランスは堅実な資産形成に不可欠な手続き
積立投資は、長期にわたって継続することで、時間分散や複利効果といったメリットを享受できる優れた資産形成手法です。そして、その効果を最大限に引き出し、リスクを適切に管理しながら目標達成を目指す上で、「リバランス」は欠かせない運用管理の手続きです。
定期的にご自身のポートフォリオを確認し、必要に応じてリバランスを行うことで、当初設定したリスク水準を維持し、市場の波に左右されにくい、より堅実な資産運用を続けることができます。
複雑に感じる必要はありません。年に一度、ご自身のポートフォリオを確認する日を決め、目標とする配分から大きく乖離していないかチェックすることから始めてみてください。この一手間が、将来の資産を守り、安心して老後を迎えるための大きな力となるはずです。
ぜひ本記事を参考に、ご自身の積立投資にリバランスを取り入れてみてください。