積立投資のリスクとどう向き合うか:初心者が知っておくべきポイント
はじめに
将来に向けた資産形成について検討されている中で、積立投資という言葉に触れ、その有効性について耳にすることが増えているかと存じます。低金利が続く状況下で、貯蓄だけでは資産が増えにくい現状に不安を感じ、何か手を打ちたいとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
一方で、「投資」と聞くと、「リスク」という言葉が頭をよぎり、過去の失敗談や、漠然とした不安から、なかなか第一歩を踏み出せずにいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。特に、これまで投資経験が少ない方にとっては、リスクという未知数な要素は大きな懸念材料となり得ます。
しかし、資産形成においてリスクは避けて通れない要素ではありますが、その種類を理解し、適切に向き合うことで、堅実な資産形成の道筋は見えてきます。この記事では、積立投資に伴う主なリスクについて解説し、それらをどのように捉え、賢く付き合っていくべきか、初心者の方にも分かりやすくご説明いたします。積立投資を始めるにあたってのリスクへの不安を軽減し、安心して資産形成に取り組んでいただくための一助となれば幸いです。
積立投資における主なリスクの種類
積立投資は、リスクを抑えながら長期的な資産形成を目指す有効な手段ですが、元本保証ではないため、いくつか考慮すべきリスクが存在します。主なリスクについて理解しておきましょう。
価格変動リスク
投資対象となる金融商品(投資信託など)の市場価格が変動するリスクです。経済情勢の変化、企業の業績、金利の動向、世界的なニュースなど、様々な要因によって価格は常に上下します。購入時よりも価格が下落した場合、評価額が元本を下回る可能性があります。
金利変動リスク
一般的に、市場金利が上昇すると、債券価格は下落する傾向があります。積立投資の対象に債券が含まれる場合や、金利動向が株式市場に影響を与えることで、間接的に資産価格に影響を与える可能性があります。
為替変動リスク
海外の資産に投資する場合に発生するリスクです。投資した資産の現地通貨に対する円の為替レートが変動することで、円換算した際の資産価値が変動します。例えば、円高が進むと、海外資産の円換算価値は目減りします。
信用リスク(デフォルトリスク)
投資対象となる企業や国などの発行体が、利息や元本を支払えなくなる(債務不履行、デフォルト)リスクです。特に債券投資において重要なリスクですが、株式投資においても企業の経営破綻リスクとして考慮する必要があります。
なぜ積立投資はリスクと賢く付き合いやすいのか
積立投資が初心者の方やリスクを抑えたいと考える方に適しているとされる理由の一つに、上記のリスクと賢く付き合うための仕組みが自然と組み込まれている点が挙げられます。
時間分散の効果(ドルコスト平均法)
積立投資では、毎月決まった金額を継続して投資します。これにより、基準価額が高い時には購入量が少なくなり、基準価額が低い時には購入量が多くなります。結果として、長期的に見ると購入単価を平準化する効果が期待できます。これをドルコスト平均法と呼びます。これにより、一度に高値掴みをしてしまうリスクを軽減できます。相場が下落しても、安い価格で多くの口数を購入できる機会と捉えることで、その後の上昇局面でメリットを享受しやすくなります。
長期投資の重要性
積立投資は、短期的な市場の変動に一喜一憂せず、長期的な視点で資産を育てることを前提としています。過去の市場データを見ると、短期的には大きな価格変動があったとしても、長期的に見れば経済成長に伴い資産価格は緩やかに上昇してきた傾向が見られます。長期で保有することで、短期的な価格変動リスクの影響を和らげ、複利の効果も味方につけることが期待できます。
分散投資の実践
積立投資で利用される投資信託などは、あらかじめ国内外の複数の資産や銘柄に分散投資を行っているものが多数あります。一つの資産や地域に集中投資するよりも、複数の異なる特性を持つ資産に分散投資することで、どれか一つの価格が大きく下落しても、ポートフォリオ全体への影響を抑えることができます。積立投資を通じて、自然と分散投資を実践できる点も大きなメリットです。
リスクと上手に付き合うための具体的なステップ
積立投資におけるリスクを理解した上で、それをコントロールし、賢く付き合っていくための具体的なステップをご紹介します。
1. 投資の目的と目標金額、期間を明確にする
何のために資産形成をするのか(老後資金、教育資金など)、いつまでに、いくら必要なのかを具体的に設定します。これにより、取るべきリスクの度合いや、投資対象、積立額などを検討する上での基準が定まります。長期的な視点を持つことが、短期的な価格変動に惑わされないための基礎となります。
2. 自分に合ったリスク許容度を知る
投資に対する考え方や、万が一資産が目減りした場合にどの程度まで耐えられるか(リスク許容度)は人それぞれ異なります。年齢、収入、家族構成、現在の貯蓄額などを考慮し、無理のない範囲で投資を行うことが重要です。リスク許容度を超えた投資は、市場が下落した際に精神的な負担が大きくなり、焦って損失を確定させてしまう原因となり得ます。
3. 適切な資産配分を検討する
リスク許容度と投資の目的に応じて、どのような資産(国内外の株式、債券、REITなど)に、どの程度の割合で投資するか(資産配分)を検討します。一般的に、株式の割合が高いほどリスク・リターンは高まり、債券の割合が高いほどリスク・リターンは抑えられる傾向があります。分散投資を意識した資産配分がリスク低減につながります。
4. 無理のない範囲で継続する
積立投資の最大の強みは継続することにあります。生活資金を圧迫するような無理な金額設定ではなく、毎月無理なく続けられる金額を設定することが重要です。これにより、市場の短期的な変動に動揺することなく、淡々と積立を続けることができます。
5. 定期的に内容を確認する
一度積立設定をしたら、基本的に放っておいて良いのが積立投資のメリットの一つです。しかし、年に一度など、定期的に運用状況を確認することは大切です。資産配分が大きく崩れていないか、設定した目標や期間に変更はないかなどを確認し、必要に応じて調整を検討します。ただし、市場の短期的な動きを見て頻繁に変更することは避けるべきです。
リスクに関する追加の注意点
積立投資はリスクを抑える仕組みがありますが、以下の点にも留意が必要です。
- 元本保証ではありません: 積立投資は預金とは異なり、投資した元本が保証されるものではありません。市場の大きな下落局面では、評価額が投資元本を下回る可能性があります。
- 手数料がかかる場合があります: 投資信託などの金融商品には、購入時手数料(現在は無料のものが多い)、信託報酬(保有期間中にかかる費用)、売却時手数料などがかかる場合があります。これらのコストは運用成果に影響するため、事前に確認することが重要です。特に信託報酬は長期保有するほど影響が大きくなります。
- 税金について理解する: 運用益や分配金には税金がかかります。NISAやつみたてNISAなどの非課税制度を活用することで、税制面でのメリットを享受できます。制度の内容を理解し、上手に活用することを検討してください。
まとめ
積立投資は、価格変動リスク、金利変動リスク、為替変動リスク、信用リスクなど、いくつかのリスクを伴いますが、時間分散(ドルコスト平均法)や長期投資、分散投資といった積立投資ならではの特性によって、これらのリスクを効果的にコントロールし、賢く付き合っていくことが可能です。
リスクを過度に恐れるのではなく、その種類を理解し、ご自身の投資目的やリスク許容度に合わせて適切な計画を立て、無理のない範囲で継続することが、積立投資を成功させる鍵となります。短期的な市場の動きに惑わされず、長期的な視点で資産が育っていく過程を見守ることが大切です。
この記事が、積立投資におけるリスクへの理解を深め、将来の資産形成への一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。まずは、ご自身の現状と目標を整理することから始めてみてはいかがでしょうか。