積立投資で評価額がマイナスになったらどうする?初心者のための冷静な対処法
はじめに:積立投資で評価額がマイナスになることは珍しくありません
資産形成のために積立投資を始められた方が、運用報告を見て「あれ、評価額が積立元本を下回っている(マイナスになっている)」という状況を目にすることは少なくありません。特に投資を始めたばかりの頃や、市場全体が大きく変動した時期に起こりやすい現象です。
この状況に直面すると、「投資はやはりリスクが高いのではないか」「このまま損失が拡大するのではないか」といった不安を感じられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、積立投資において一時的な評価額のマイナスは、運用プロセスの一部であり、必ずしも失敗を意味するものではありません。
この記事では、積立投資で評価額がマイナスになった場合に、慌てずに冷静に対処するための考え方と具体的な行動について解説します。これを読むことで、市場の短期的な変動に一喜一憂せず、長期的な視点で資産形成を続けるための知識が得られるでしょう。
なぜ積立投資でも評価額がマイナスになるのか?
積立投資はリスクを抑えた運用方法として推奨されますが、それでも一時的に評価額がマイナスになる可能性はあります。その主な理由は、投資対象の価格が日々変動するためです。
市場価格の変動リスク
投資信託などで国内外の株式や債券に投資している場合、これらの市場価格は経済状況、企業の業績、政治情勢など様々な要因によって常に変動しています。購入した時点よりも価格が下落すれば、保有している資産の価値も下がり、評価額が積立元本を下回ることがあります。これは「価格変動リスク」と呼ばれるものです。
始めたばかりの頃や相場の下落時
積立投資は時間をかけてコツコツと投資する手法ですが、運用開始間もない時期に市場全体が大きく下落した場合などは、どうしても評価額がマイナスになりやすくなります。また、運用期間が長くても、一時的に大きな市場ショックに見舞われれば、それまでの利益が相殺されてマイナスに転じることも理論上はあり得ます。
しかし、ここで重要なのは、このマイナスはあくまで「評価上の損失(含み損)」であり、実際に売却して現金化しない限り、損失は確定しないということです。
評価額がマイナスでも慌てる必要がない理由
積立投資において一時的な評価額のマイナスは、必ずしも悲観する必要のないサインです。むしろ、長期的な視点で見れば、それは資産を増やすチャンスになり得ます。
積立投資は長期・分散を前提としている
積立投資の最大の強みは、長期にわたってリスクを分散しながら投資を続けられる点にあります。一時的な市場の下落は、過去のデータを見ても繰り返されてきました。そして多くの場合、長い時間をかければ市場は回復し、成長を続けてきました。
数十年というスパンで資産形成を目指す積立投資において、途中の短い期間で評価額がマイナスになることは織り込み済みであるべき事象です。短期的な値動きに捉われず、長期的なトレンドに目を向けることが大切です。
下落時は安く買い付けるチャンス(ドルコスト平均法)
積立投資では、毎月一定額を投資対象に積み立てていきます。この手法を「ドルコスト平均法」と呼びます。投資対象の価格が高い時は少なく、価格が安い時は多く買い付けることになるため、結果として平均購入価格を抑える効果が期待できます。
評価額がマイナスになっているということは、投資対象の価格が下がっていることを意味します。これはつまり、毎月の積立額で、以前よりも多くの口数を買い付けられるということです。市場が回復し、価格が上昇に転じた際には、安値で仕込んだ分が大きなリターンを生む可能性が高まります。したがって、評価額のマイナスは「将来の値上がりに備えて安く仕込めるバーゲンセール」と捉えることもできるのです。
評価損は売却しない限り確定しない
前述の通り、評価額のマイナスは「含み損」と呼ばれるものです。これはあくまで現時点での評価であり、実際にその時点で投資信託などを売却した場合に発生する損失です。積立投資は、原則として定年後の取り崩し開始まで売却しません。つまり、運用期間中に評価額がマイナスになっていても、そのまま積立を続ける限り、損失は確定しないのです。市場が回復すれば、含み損は解消され、利益に転じる可能性が高いといえます。
評価額がマイナスになったら初心者が取るべき具体的な行動
評価額がマイナスになったからといって、すぐに慌てて解約したり、積立を止めたりする必要はありません。むしろ、冷静に状況を把握し、適切な行動をとることが重要です。
1. 状況を冷静に把握する
まずは、ご自身の積立投資の状況を冷静に確認してください。 * 評価額はどのくらいマイナスになっているか? * 積立元本はいくらか? * いつから積立投資を始めているか? * 当初設定した運用目標(老後資金など)までの期間はあとどのくらいか?
短期的な評価額のマイナスに感情的にならず、長期的な目標に対して現在の状況がどのような位置づけにあるのかを確認することが第一歩です。
2. 運用計画を見直す(必要に応じて)
積立投資を始める前に、ご自身のライフプランやリスク許容度に基づいて運用計画を立てているはずです。評価額がマイナスになったことを機に、その計画に無理がないかを見直してみましょう。 * 設定した積立額は、現在の家計状況に照らして無理のない範囲か? * 投資対象(投資信託の種類など)は、当初の目標やリスク許容度に適しているか?
もし、評価額のマイナスを見たことで過度な不安を感じるようであれば、それは当初設定したリスク許容度が、ご自身の実際の心理的な耐性よりも高かったのかもしれません。その場合は、積立額を減らしたり、よりリスクの低い投資対象に見直したりすることも検討できます。ただし、これはあくまで計画の「見直し」であり、感情的な「変更」ではないことに注意が必要です。
3. 基本的には積立継続が原則
評価額がマイナスになった時こそ、ドルコスト平均法の効果を最大限に活かせるチャンスです。安値で買い付けることで、将来の大きなリターンにつながる可能性が高まります。そのため、家計に無理がなく、当初の運用計画にも大きな問題がなければ、基本的には積立を継続することが推奨されます。
市場が回復するまで積立を続けることで、含み損は解消され、やがて利益に転じる可能性が高まります。目先のマイナスに動揺せず、粛々と計画通りに続ける「何もしない」という選択肢が、積立投資においては最も効果的な場合が多いのです。
4. 狼狽売りは避ける
評価額がマイナスになった際に最も避けるべき行動は「狼狽売り」です。市場が下がっていることに恐怖を感じ、慌てて売却してしまうと、一時的な含み損が確定した損失になってしまいます。
狼狽売りをしてしまうと、その後の市場の回復による恩恵を受けられなくなります。積立投資の目的は長期的な資産形成であり、短期的な市場変動に振り回されないことです。一時的なマイナスは、積立投資の「試練」とも言えますが、それを乗り越えることで、より大きな成果を得られる可能性が高まります。
リスクと注意点
一時的な評価額のマイナスは積立投資の過程で起こり得る自然な現象ですが、もちろんリスクが全くないわけではありません。
市場が回復しない可能性(低いがゼロではない)
長期的に見れば市場は成長傾向にあるとされていますが、将来的にどうなるかを断定することは誰にもできません。投資対象によっては、回復に非常に長い時間がかかったり、あるいは十分な回復が見られない可能性も理論上はゼロではありません。
だからこそ、積立投資においては、特定の国や地域、特定の業種に集中せず、世界中の資産に分散投資することが推奨されます。また、ご自身の年齢やリスク許容度に応じた適切な資産配分(アセットアロケーション)を行うことが、このようなリスクを低減する鍵となります。
無理な積立額設定は継続を困難にする
評価額がマイナスになった際に精神的な負担が大きくなるのは、無理な積立額を設定している場合です。「この積立を止めないと家計が苦しい」という状況では、冷静な判断ができず、計画通りの継続が難しくなります。
積立投資は、余剰資金の範囲内で行うのが鉄則です。緊急予備資金を確保した上で、毎月無理なく継続できる金額を設定することが、市場変動時にも動揺しないための重要な前提条件となります。
まとめ:評価額のマイナスは長期成功のためのプロセス
積立投資の運用中に評価額が一時的にマイナスになることは、決して珍しいことではありません。これは市場価格の変動に伴って自然に起こり得る現象であり、長期的な視点で見れば、安値で買い付けるチャンスとなり得ます。
評価額がマイナスになった時には、感情的にならず、まずは現在の状況と当初の運用計画を冷静に確認することが重要です。そして、家計に無理がない範囲であれば、基本的には積立を継続することをおすすめします。狼狽売りによる損失確定は避け、長期的な視点を保つことが、積立投資で成果を出すための鍵となります。
積立投資は、短期的な利益を追うものではなく、時間をかけて着実に資産を育てていく方法です。一時的な評価額のマイナスという「試練」も、長期的な資産形成のプロセスの一部と捉え、冷静に、そして粘り強く取り組んでいくことが、将来の安心へとつながるでしょう。