積立投資の始め方:初心者向け、最初の具体的なステップ
なぜ積立投資を始めるべきなのか?老後資金への不安と向き合う
将来の老後資金や、低金利でなかなか増えない手元の資金に対し、漠然とした不安を感じていらっしゃる方も多いかと存じます。投資の必要性は理解しつつも、「難しそう」「リスクが怖い」「何から始めれば良いのか分からない」と感じ、最初の一歩を踏み出せずにいる方も少なくありません。
このような状況において、積立投資は初心者の方にとって、比較的始めやすく、長期的に資産形成を目指す上で有効な手段の一つです。この記事では、積立投資を始めるにあたって、「何から始めれば良いのか」という疑問にお答えし、具体的なステップを分かりやすく解説いたします。
積立投資を始める前に:基本の確認と目標設定
積立投資とは、毎月(あるいは毎週など)決まった日に、決まった金額で、特定の金融商品を購入し続ける投資手法です。少額から始められ、購入タイミングに悩む必要がない点が特徴です。
現在のように低金利が続く環境下では、預貯金だけで資産を大きく増やすことは難しい状況です。積立投資は、長期・分散・積立という投資の原則を自然と実践できるため、時間を通じて資産を着実に増やしていくことを目指せます。
積立投資を始める前に、まずはご自身の状況を確認し、簡単な目標設定を行うことが大切です。
- 目標の明確化: 何のために積立投資を行うのでしょうか?例えば「〇年後に使う教育資金のため」「老後資金の足しにするため」など、具体的な目的を考えることで、投資期間や目標金額が見えてきます。厳密な金額設定でなくても構いません。「〇年後に△△万円くらい」といった大まかなイメージでも十分です。
- 無理のない投資金額の設定: 積立投資は継続が重要です。まずは生活防衛資金(万が一の病気や失業などに備えるための当面の生活費)を確保した上で、無理なく毎月積み立て続けられる「余裕資金」の範囲で行いましょう。家計を見直し、毎月無理なく捻出できる金額を設定することが成功の鍵となります。
積立投資を始める具体的なステップ
積立投資の基本的な考え方と準備ができたら、いよいよ具体的な手続きに進みましょう。
ステップ1:証券会社を選ぶ
積立投資を行うためには、証券会社で口座を開設する必要があります。近年はネット証券が主流であり、店舗型の証券会社に比べて手数料が低い、取り扱う金融商品の種類が多い、自宅から手軽に手続きができるなどのメリットがあります。
証券会社を選ぶ際のポイントはいくつかあります。
- 手数料: 特に投資信託の場合、購入時手数料が無料(ノーロード)であることや、積み立て設定のしやすさなどが重要です。
- 取扱商品: どのような投資信託を取り扱っているか、ご自身の興味のあるファンドがあるか確認しましょう。
- 情報提供・サポート: 投資に関する情報提供が豊富か、初心者向けのサポート体制は整っているかなども判断基準になります。
ご自身の状況や重視する点に合わせて、いくつかの証券会社を比較検討することをお勧めいたします。
ステップ2:口座を開設する
証券会社を決めたら、口座開設の手続きを行います。多くの場合、ウェブサイトから申し込みを行い、本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)やマイナンバー確認書類を提出します。手続きはオンラインで完結することが多く、数日から1週間程度で開設が完了します。
開設する口座の種類としては、「特定口座(源泉徴収あり)」が一般的で便利です。運用益に対する税金の計算や納付を証券会社が行ってくれるため、ご自身で確定申告をする手間が省けます。
また、積立投資においては、税制優遇制度である「つみたてNISA」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」を活用することも非常に有効です。これらはそれぞれ年間や毎月の投資金額に上限がありますが、運用益が非課税になるなど大きなメリットがあります。それぞれの制度には特徴がありますので、ご自身の状況に合わせて利用を検討すると良いでしょう。(つみたてNISAやiDeCoの詳細については、別途記事で詳しく解説しておりますので、そちらもご参照ください。)
ステップ3:積み立てる金融商品を選ぶ
次に、実際に積み立てを行う金融商品を選びます。積立投資で最も多く利用されるのは「投資信託」です。投資信託は、多くの投資家から集めた資金を一つにまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品です。少額から分散投資ができる点がメリットです。
投資信託を選ぶ際のポイントとしては、主に以下の点が挙げられます。
- コスト(信託報酬): 投資信託を保有している間にかかる運用管理費用です。この信託報酬は、長期で運用するほどリターンに影響を与えるため、できるだけ低いものを選ぶことが望ましいとされています。
- 分散の度合い: 株式、債券、不動産など、どのような資産に投資しているか。また、国内だけでなく海外にも分散されているか確認しましょう。特定の指数(例:日経平均株価、S&P500など)に連動することを目指すインデックスファンドは、比較的コストが低く、分散が効いているため初心者の方にも選びやすい商品です。
- ご自身の目標との合致: ご自身の運用目標(積極的に増やすか、安定的に運用するかなど)に合ったリスク・リターンの商品を選びましょう。
特定の商品の購入を推奨することはこの記事の目的ではありませんので、ご自身の判断で慎重にお選びください。多くの証券会社では、初心者向けにおすすめのファンドを紹介していますので、参考にしてみるのも良いでしょう。
ステップ4:積立設定を行う
積み立てる金融商品が決まったら、証券会社のウェブサイトなどで積立設定を行います。
- 積み立て金額: 毎月いくら積み立てるか設定します。無理のない範囲で継続できる金額を設定しましょう。
- 積み立て頻度: 毎月なのか、毎週なのかなどを設定します。一般的には「毎月」を選択される方が多いです。
- 引き落とし方法: 証券口座からの引き落としや、銀行口座からの自動引き落としなどを設定します。
これらの設定を一度行ってしまえば、以降は自動的に買い付けが行われます。
始めてからの注意点と継続の重要性
積立投資を始めたら、すぐに大きな利益が出るわけではありません。投資には元本割れのリスクも伴います。短期的な市場の変動に一喜一憂せず、設定した目標に向けて、決めた金額を淡々と積み立て続けることが大切です。
積立投資は、価格が高い時には少なく、価格が低い時には多く購入することになるため、平均購入価格を抑える効果(ドルコスト平均法)が期待できます。この効果は、価格変動がある市場において、長期で継続することで発揮されやすくなります。
定期的に(例えば年に一度など)、積立状況や市場環境を確認し、必要に応じて目標や積立金額、商品の見直しを行うことも重要ですが、頻繁な売買や設定変更は避け、あくまで「長期投資」という視点を持ち続けることが成功の鍵となります。
まとめ:最初の一歩を踏み出すことから
積立投資は、特別に難しい知識がなくても始められる、堅実な資産形成の方法です。将来への漠然とした不安に対し、具体的で建設的な一歩となり得ます。
この記事でご紹介した「証券会社を選ぶ」「口座を開設する」「積み立てる金融商品を選ぶ」「積立設定を行う」というステップは、積立投資を始めるための具体的な道筋を示しています。
まずは、ご自身の状況を確認し、無理のない範囲で最初の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。長期的な視点を持ち、着実に資産を育てていくことを目指しましょう。