【比較解説】低金利時代の資産形成:定期預金だけでは不十分?積立投資との違いとメリット
はじめに:低金利時代の資産形成、定期預金だけでは十分でしょうか
長い間、私たちは銀行に預金しておけば、それなりに資産が増える時代を経験してきました。しかし、今は超低金利時代が続いており、預金だけでは資産がほとんど増えない状況です。
一方で、漠然と将来への不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。特に、老後資金やその他のライフイベントに備えるためには、計画的な資産形成の重要性が増しています。
身近な資産を置いておく場所として多くの人が利用している定期預金と、近年注目を集めている積立投資。これらは同じ「お金を増やす」という目的で語られることもありますが、その仕組みや特徴は大きく異なります。この違いを理解することは、今後の資産形成を考える上で非常に重要になります。
この記事では、定期預金と積立投資の基本的な仕組みから、それぞれのメリット・デメリット、そして資産を増やす「仕組み」の違いについて分かりやすく解説します。低金利時代にどのような方法で資産と向き合うべきか、そのヒントとしてお役立ていただければ幸いです。
定期預金の基本的な仕組みと特徴
定期預金は、あらかじめ預け入れ期間を決めてお金を預ける預金方法です。普通預金よりも一般的に高い金利が適用されますが、原則として満期になるまで引き出すことができません。
定期預金のメリット
- 元本保証: 預けたお金(元本)が金融機関の破綻などによって減るリスクが極めて低いことが最大の特徴です。日本では預金保険制度により、一定額まで保護されています。
- シンプルで分かりやすい: 仕組みが非常にシンプルで、誰にでも理解しやすい資産管理方法です。
- 安全性が高い: 市場の変動に影響されず、約束された金利で運用されます。
定期預金のデメリット
- 金利が低い: 超低金利が続く日本では、定期預金で得られる利息はごくわずかです。資産が大きく増えることは期待できません。
- インフレに対応できない: 物価が上昇する(インフレ)と、お金の価値は相対的に下がります。定期預金で資産が増えなくても、物価上昇率が預金金利を上回る場合、実質的な資産価値は目減りしてしまいます。
積立投資の基本的な仕組みと特徴
積立投資は、毎月(または毎週など)決まった日に、決まった金額で投資信託などの金融商品を買い続ける投資方法です。少額から始められる手軽さと、長期的な視点で資産形成を目指せる点が特徴です。
積立投資のメリット
- 少額から始められる: 月数千円程度から始められることが多く、まとまった資金がなくてもスタートできます。
- 自動で継続できる: 一度設定すれば、後は自動的に買付が行われるため、手間がかかりません。
- ドルコスト平均法の効果: 毎月定額を買い付けることで、価格が高い時は少なく、価格が低い時は多く購入することになります。これにより、購入単価を平準化し、高値掴みのリスクを低減する効果が期待できます。
- 複利効果が期待できる: 運用で得た利益を再び投資に回すことで、利益が利益を生む「複利」の効果が期待できます。長期で運用するほど、この効果は大きくなります。
- インフレに対応しうる: 投資対象によっては、インフレによる物価上昇に合わせて資産価値の増加が期待できます。
積立投資のデメリット
- 元本保証がない: 投資対象の価格は変動するため、運用状況によっては投資した金額(元本)を下回る(元本割れ)リスクがあります。
- 短期的には変動が大きい場合がある: 市場の状況によっては、短期間で評価額が大きく変動することがあります。
資産を増やす「仕組み」の決定的な違い
定期預金と積立投資の最も大きな違いは、資産を増やす「仕組み」にあります。
- 定期預金: 預け入れた元本に「金利」が付与されることで資産が増えます。金利は固定されているため、将来の増え幅は比較的予測しやすいですが、現在の金利水準では大きな増加は期待できません。
- 積立投資: 投資した金融資産の「価格変動」や「分配金(再投資)」によって資産が増減します。市場の動向に左右されるため、将来の価格は予測できませんが、長期的な経済成長などを通じて資産が増加する可能性を秘めています。
つまり、定期預金は「時間をかけて安定的に利息を得る」仕組みであり、積立投資は「時間をかけて運用成果を得る」仕組みと言えます。
なぜ今、積立投資が注目されるのか:定期預金との比較から見えること
定期預金は安全性が非常に高い一方で、低金利が続く現状では、仮に100万円を0.001%の金利で1年間預けても、税引き後の利息はわずか数円にしかなりません。これでは、資産を「増やす」という目的を達成することは極めて困難です。
また、インフレが進行すると、例えば今まで100円で買えていたものが110円になるように物価が上昇します。この時、銀行預金に100円を入れておいても1年後に100円の価値はそのままですが、買えるものは少なくなってしまいます。これは、お金の「実質的な価値」が目減りしていることを意味します。
積立投資は元本保証はありませんが、株式や債券など、価格変動のある資産に投資することで、物価上昇分をカバーし、さらにそれを超える資産増加を目指す可能性があります。もちろんリスクは伴いますが、積立という手法自体がリスクを分散し、長期で続けることで価格変動の影響を和らげる効果が期待できます。
低金利でインフレのリスクもある現代において、定期預金だけでは資産の「安全な保管場所」としては有効でも、「資産を増やす」あるいは「資産価値を維持する」という点では十分ではない可能性が高まっています。だからこそ、リスクを抑えつつ長期的な資産成長を目指せる積立投資が注目されているのです。
積立投資を始める前に:定期預金との「役割」の違いを理解する
定期預金と積立投資は、どちらかが絶対的に優れているというものではありません。それぞれに異なる役割があります。
- 定期預金: 近い将来に使う予定のある資金(数年以内に必要になる資金)、緊急予備資金など、「絶対に減らしたくないお金」の保管場所として適しています。
- 積立投資: 10年、20年といった長期的な視点で「お金を増やしたい」と考える資金の運用方法として有効です。老後資金など、すぐに使う予定のない資金の形成に向いています。
ご自身のライフプランや目標に応じて、それぞれの役割を理解し、資産をどのように配分するかを検討することが重要です。全ての資金を投資に回す必要はありませんし、逆に全ての資金を定期預金にしておくことが必ずしも賢明とは言えない時代になった、と考えることができます。
知っておきたいリスクと注意点
積立投資には元本割れのリスクがありますが、これは定期預金にはない、投資特有のリスクです。しかし、定期預金にもインフレによって実質的な資産価値が目減りするというリスクがあることを忘れてはなりません。
積立投資のリスクは、長期・分散投資を行うことで軽減できる可能性が高いです。積立投資は、まさに時間分散(ドルコスト平均法)と、投資信託を通じて地域や資産の種類を分散する効果を兼ね備えています。短期間で大きく増やそうとせず、コツコツと長く続けることが、このリスクと向き合う上で最も重要です。
定期預金は安全性を求める資金に、積立投資は長期的な成長を目指す資金に、というように、ご自身の資金の性格に合わせて賢く使い分けることを検討してみてください。
まとめ:低金利時代を乗り切る賢い選択肢として
この記事では、定期預金と積立投資の違いについて解説しました。
- 定期預金: 安全性は高いが、低金利のため資産増加は期待しにくい。インフレによる実質価値の目減りリスクがある。
- 積立投資: 元本保証はないが、長期・分散投資でリスクを抑えつつ、低金利・インフレ時代でも資産成長を目指せる可能性がある。
低金利が続き、物価上昇の懸念もある現代において、定期預金だけでは将来の資産に対する不安を完全に払拭することは難しいかもしれません。積立投資は、その不安に対し、計画的かつ堅実に長期的な視点で資産を育てていくための一つの有力な選択肢となり得ます。
まずは、ご自身の現在の資産状況や将来の目標を整理し、定期預金と積立投資のそれぞれの特性を理解することから始めてみてはいかがでしょうか。そこから、ご自身に合った資産形成のロードマップを描いていくことができます。